バンド、ゲスの極み乙女のドラマーであり(ほな・いこか名義)、俳優としての活躍も目覚ましいさとうほなみさん(34歳)。 話題を集めたドラマ『あなたがしてくれなくても』をはじめ、今年も多くの作品で演技を披露。公開中の映画『花腐し』でヒロインの20代と30代を演じたさとうさんが、自身自身の過去を振り返り、「大切なのは時間の積み重ね方」と語りました。
綾野剛は気遣いあるストイックな人
――映画『花腐し』では、綾野剛さん演じる映画監督の栩谷と、脚本家を目指す伊関(柄本佑)というふたりの男性に、それぞれの時代で愛されてきたヒロイン・祥子を演じました。濃密なシーンも多かったですが、おふたりの印象を教えてください。 さとうほなみさん(以下、さとう)「綾野さんは、お芝居に対しての考え方がストイックな方という印象でした。技術的な面でもとても支えていただいて、濡れ場や、ふたりで倒れこんだり転がり落ちたりといった肉体を使う場面でのアクション指導のようなことも丁寧に教えていただきました。祥子にとって辛い時期に一緒にいた人ですが、私自身、綾野さんにそばにいてもらってとても心の支えになりました。気遣いのあるストイックな俳優さんという印象です」 ――気遣いがあって、ストイック。 さとう「ひとつひとつの動きから、カメラが回っていないところまで、具体的に言い始めると挙げきれないくらいの気遣いがありました。それがスタッフキャスト、みんなに分け隔てない感じがあったので、人間性がすごいんだろうと感じました」 ――柄本さんはいかがでしたか? さとう「柄本さんは本当にナチュラルな方で飾らないイメージそのままでした。ふわっとお話しているそのままで役に入っていくんです。こちらからは境目があまり見えないんですけど、でもちゃんと伊関になっているんですよね。“え、今どこで変わったんだ、見逃した!”みたいな。すごくナチュラルで。柄本さんもとても心地がよくそばにいさせていただける感じの方でした」
若い頃は、本当に寝ずに過ごしていた
――2000年と2012年の翔子を演じています。10年以上の隔たりがありますが、10年ひと昔と言うように、10年過ぎれば人は変わります。さとうさん自身、10年以上前となると、かなり今とは違いますか? さとう「とんでもなく無茶して生きていましたからね(苦笑)。ちょうど21~22歳までかな、寝る間もなく働いて。朝パン屋さん、お昼は音楽スタジオ、夜は居酒屋で働いました。それでやっと深夜にドラムの個人練習。それでまた朝になるとパン屋で働く。本当に寝ずに過ごして好きなこともできていない状態でした。そこから比べると、今は夜、ちゃんと眠るようになりました(笑)」 ――練習時間を取るのも難しかったということですが、夢を追うことは、いつの時代も難しい問題です。『花腐し』も、夢を追っていた女性の物語として観ることもできます。そこに人生の節目となる出会いや出来事が重なって。そうした部分は共感できましたか? さとう「二十歳前後のときに祥子が伊関と出会って、彼女は夢に向かって頑張っていた。でも伊関は夢を諦めようとしているところがあって……。それから年月が経って、栩谷と出会ったときの祥子は、今度は別の気持ちになっています。私自身、若い時の祥子の夢への気持ちももちろん分かるし、年月を経て、環境の変化とともに考えが変化していくことも分かります。 あることがあって、栩谷の態度に裏切られたような気持ちになったり、彼がいなければ自分にはもう行くところはないと感じたり。30歳を過ぎた祥子の不安は体にも出てくるものでしょうし、分かるというか、分かってしまうようなところもあると思います」
大切なのは年齢じゃなく時間の積み重ね方
――体でも考え方でも、20代から30代になって、さとうさん自身が感じる変化はありますか? さとう「私のなかで30歳への恐怖みたいなものは25歳の頃に来ていました。あと5年で30歳だ! と。20歳から25歳までがすごく早かったんですよね。それこそさっきお話したように、寝ずにバイトして、今もガムシャラな私が、さらにガムシャラに生きていた時期だったので、すごく過ぎるのが早くて。この速度で30歳になっちゃったらマズイぞと思って。 でも27歳ぐらいのとき、25歳を過ぎたからって、別に何も変わらないなと思って。だったら、30歳になったって、何が変わるんだ? 何も変わらないじゃん。怖くないじゃん、と。今、34歳になりましたけど、年齢じゃないなと。年齢じゃなくて、積み重ね方だなと」 ――年齢ではなくて、積み重ね方。 さとう「はい。大切なのは時間の積み重ね方だと実感しています。確かに、すごくいい作品に出会えたり、いい人に出会えたりして、素敵なことがたくさん増えて、いい年月を重ねているなと感じてはいますが、それが、年齢がどうだからとは特に思いません」
『あなして』では瑛太と励まし合っていた
――ありがとうございます。ちなみに、いい作品との出会いというお話がありましたが、今年は『あなたがしてくれなくても』もとても評判になりました。さとうさんが演じた三島結衣花もとても印象的で、反響もすごかったかと。 さとう「本当にすみませんでしたって感じです(苦笑)。既婚者の方から嫌われてしまったんじゃないかと。私自身はそんなことするタイプじゃないんですよ」 ――そんな、なぜに謝るんですか(苦笑)。すごく刺さるとてもいいドラマでした。反響がすごかっただけで、嫌われたなんてことはないと思います。 さとう「そうですか? あの頃はすごく嫌われていた印象で。ただ、あの……、あのときは、ドラマで浮気をさせていただいていた方(永山瑛太)と、“こういうのは嫌われてなんぼだよね”と、お互いに励まし合って頑張って撮っていました(苦笑)」 ――そうだったんですね(笑)。本作ではまた全く違った愛の形が観られますね。
コメント